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スマホで撮影するだけ! 内臓脂肪を“見える化”して動機付け ~地域・職域のポピュレーション向け健康づくりに新提案~

 「肥満は万病への静かな侵略者」と言われます。とくに、内臓脂肪の過剰蓄積は、血圧・血中脂質・血糖の異常を招き、動脈硬化のリスクを上昇。脳卒中や心疾患、糖尿病合併症などを発症しやすくし、健康長寿を阻害する要因になります。

 ところが、内臓脂肪は見えませんし、日常生活で測定する機会もなかなかありません。危険信号に気づきにくいものです。

 そんな中、スマホで簡便に内臓脂肪の大きさを“見える化”できるツールが現れました。第45回日本肥満学会の市民公開講座「“肥満症”の予防・改善で100年健康人生を考える」(主催:日本肥満症予防協会)に登場した、花王(株)のNAiBO®-eyeです。

 講座に参加した市民の89%が体験を希望した人気ぶり。「ふだん測れないものなので、チェックしてみたかった」との声が多数寄せられました。地域や職域で大勢の人を対象とした健康づくりにぴったりで、健康的な生活への動機づけにつながるツールとしての期待が高まります。

2024年10月にパシフィコ横浜で開催された第45回日本肥満学会
2024年10月にパシフィコ横浜で開催された第45回日本肥満学会
日本肥満症予防協会が実施した市民公開講座には100名以上が参加
日本肥満症予防協会が実施した市民公開講座には100名以上が参加

市民公開講座「肥満症予防実践プログラム」

 市民公開講座では、肥満研究の最前線にいる先生方の講演に続き、「肥満症予防実践プログラム」が行われました。花王GENKIプロジェクトが協力するこのプログラムは、まず、スマホによる撮影(NAiBO®-eye)で内臓脂肪の大きさ(目安)を測定。続けて、内臓脂肪と生活習慣に関する研究から考案された「生活チェックシート(18問)」で、自分の身体活動や食生活の特徴をチェック。そして、これらの自分のデータを見ながら、セミナー「チェック!あなたのくらし方は内臓脂肪をためやすい?ためにくい?」を聞くものです。

 一般論ではなく“自分ごと”として、内臓脂肪をためないくらし方を学び、動機づけすることを狙っています。

スマホで数分で内臓脂肪をチェック

花王はこれまでも生活習慣と内臓脂肪を“見える化”するサービスに取り組み、地域・職域の健康づくりを支援してきました。2014年には、従来X線CTを用いて行われてきた内臓脂肪測定を飛躍的に簡便にしたベルト型の内臓脂肪計(医療機器)を開発し実用化しています。

 そしてさらに、地域や職域の健康づくりの起点となるイベント等で、より多くの人々に自分の内臓脂肪を意識するきっかけを提供したいと考え、スマホで撮影するだけで、内臓脂肪の目安がわかるNAiBO®-eyeを開発。

 NAiBO®-eyeのアプリをダウンロードしたスマホやタブレットで、対象者を着衣のまま正面と側面から撮影するだけで、内臓脂肪インデックス(目安値)がわかります。市民公開講座では当日初めて操作するアルバイトスタッフが撮影し、約2分で数値が表示されました。インターネット環境さえあればどこでも使用できる手軽さです。

①正面に立ち両手をやや広げる、②横向きに立つ――内臓脂肪チェックはこれだけで終わり
①正面に立ち両手をやや広げる、②横向きに立つ――内臓脂肪チェックはこれだけで終わり

「内臓脂肪が簡単にわかるのでびっくり」

 市民公開講座では、参加した市民のほとんどが測定を希望するほどの人気でした。普段なかなか測定することができない内臓脂肪への関心の高さがわかります。

 主催した日本肥満症予防協会のアンケート結果によると、実践プログラムを受けた人の81%が「生活習慣を改善するための行動を取ろうと思った」と回答。「内臓脂肪チェックが参考になった」が62%、「生活チェックシートが参考になった」が52%、「自分のデータを見ながら聞くセミナーが参考になった」が57%、という好評価を得ました。

また、実践プログラムに参加した方からは、次のような感想が寄せられました。

 「測ったことがなかったので、数字がわかってよかった」(70代女性)

 「母に誘われ参加した。もともと体重が多いので内臓脂肪も?と思っていたが、その通りだった。チェックシートの項目もすべて該当。これをきっかけに改善したい」(30代女性)

 「太る一方なので、やっぱりという数字。どうにかしなければ……」(70代女性)

 「生活習慣のチェックがあるというので参加した。初めて測ってみたが、内臓脂肪が簡単にわかるのがよい」(80代男性)

 「BMIは25未満なのに、内臓脂肪の数字が意外に高く、驚いた。講座でのアドバイスを参考に工夫してみたい」(70代男性)

 このように多くの参加者が、内臓脂肪の大きさを初めて知り、その重要性に気づいたようです。

「生活チェックシート」と「セミナー」が連動

 「生活チェックシート」では、内臓脂肪の蓄積に関わる4つのくらし方のポイント「身体活動、食事の量・質・時間」の18の設問に「あてはまる・あてはまらない」を〇付けし、自分の生活を振り返ります。

 セミナー「チェック!あなたのくらし方は内臓脂肪をためやすい?ためにくい?」では、自分の内臓脂肪の大きさと生活チェックのデータを見ながら、内臓脂肪のリスクや内臓脂肪をためない4つのくらし方のポイント(身体活動、食事の量・質・時間)を学びます。ポイントごとにどういう改善策があるか……「座っている時間を減らす」「食事のサイズを小さく」「朝食は起きたらできるだけ早く食べる」「しっかり食べて内臓脂肪をためにくい食べ方(スマート和食®)」など……いずれも、無理なくできる改善方法のアドバイスが提示されました。

 自分の数値がわかると、セミナーの内容も切実さを増します。受講者は、「生活チェックシート」を見ながら熱心に耳を傾け、身体活動や食事の量・質・時間の改善課題を学びました。「改善策をもっと詳しく知りたくなった」という声も聞かれました。

セミナーでは内臓脂肪の蓄積に関わるくらし方のポイントごとに改善策をアドバイス
セミナーでは内臓脂肪の蓄積に関わるくらし方のポイントごとに改善策をアドバイス
「市民公開講座」の会場一角に設けられた内臓脂肪測定のスペース
「市民公開講座」の会場一角に設けられた内臓脂肪測定のスペース

地域・職域の健康づくりイベントで活用しやすいツールのパッケージ

地域・職域の健康づくりを支援している花王GENKIプロジェクトの守谷祐子、安永浩一、上原智美の3氏に話をうかがいました。

 「人生100年時代を迎え、働き世代のメタボ対策、高齢者の健康増進・フレイル対策は一層重要です。こうした中で、『内臓脂肪型肥満』はさまざまな生活習慣病をもたらし、高齢者医療費を上昇させる要因ともなっています。花王は長年、内臓脂肪や代謝に関する基礎研究を重ね、内臓脂肪に着目した健康支援サービスに取り組んできました」(守谷氏)

 「NAiBO®-eyeは、数千人の内臓脂肪データと体形データから開発しました。体重や腹囲が同じ場合でも、皮下脂肪で太っている人と内臓脂肪で太っている人では、お腹の形状が異なるという知見を用いています」(安永氏)。ただし、NAiBO®-eyeの結果は“目安”なので、正確な数値を求めるときは、「医療機器による測定が最適」と安永氏はつけ加えます。

内臓脂肪が多いと前後幅、皮下脂肪が多いと横幅も大きくなる
内臓脂肪が多いと前後幅、皮下脂肪が多いと横幅も大きくなる

 「スマホやタブレットがあれば実施できるNAiBO®-eyeの内臓脂肪チェックは、日ごろ健康に関心のある方はもちろん、あまり関心のない方も呼び込む健康イベントに最適です。NAiBO®-eyeなら、手軽に頻繁に内臓脂肪の状態をモニタリングできるので、健康習慣へのモチベーションを維持しやすいというメリットもあります。まずは、自治体で催される市民向けの健康イベント等で、多くの皆様に内臓脂肪への“気づき”を得ていただきたい、そう願っています」(上原氏)

 「自分の内臓脂肪が気になったその時に、自分の生活習慣についても自覚していただくのが大切。それが生活チェックシートです。NAiBO®-eyeと生活チェックシートの両方で、より改善を推進できます」(上原氏)

 NAiBO®-eyeと生活習慣チェックのパッケージは、簡易にできる測定+動機づけとして、自治体や企業がポピュレーション向けに開催する健康イベント等での活用が期待されます。

 「一人でも多くの皆様にご自分の内臓脂肪を意識していただき、『内臓脂肪は生活を変えれば減らせる』ということを理解して健やかにくらしていただきたい、と願っています」と守谷氏。

 また、今回の市民公開講座の主催者である日本肥満症予防協会事務局の永島貴弘氏は、「毎年3月4日は『世界肥満デー』です。肥満症を予防して100年元気にくらしていただくために、今日のような取り組みを今後日本全国で提供できたらと思っています」と今後への期待を話します。

 「万病への静かな侵略者」と呼ばれながらも、これまで測る機会に恵まれず、実感しにくかった内臓脂肪。しかし、このNAiBO®-eyeを活用すれば、即座に内臓脂肪の大きさ(目安)を実感できます。“100年健康人生”に向けた健康づくりを促す恰好のツールとなりそうです。

(左から)花王GENKIプロジェクトの守谷祐子氏(リーダー)、安永浩一氏(サブリーダー)、上原智美氏(マネージャー)
(左から)花王GENKIプロジェクトの守谷祐子氏(リーダー)、安永浩一氏(サブリーダー)、上原智美氏(マネージャー)

※「NAiBO」は花王株式会社の登録商標です。



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