泉佐野市で開催された大会が健康都市活動の再始動を象徴する場として盛り上がりを見せる中、愛知県大府市、神奈川県大和市、愛知県尾張旭市が活動報告を行った。いずれも第9回健康都市連合国際大会(2021年・香港)でアワードを受賞した自治体だ。
愛知県大府市 岡村秀人市長
歩きたくなるまちづくりと市民主体の生涯スポーツの推進
本市では、全ての市民が活動的な生活を送ることができるよう、さまざまな施策を展開している。主な取組は「歩きたくなるまちづくり」と「市民主体の生涯スポーツの推進」で、目指すのは市民の「活動量の増加」と「運動習慣の確立」だ。
まず「活動量の増加」に向けては、緑道や親水空間の整備により気軽にウォーキングに親しめる環境整備とともに、ウォーキングマップの配布で啓発を図っている。さらに「月例ウォーキング」や「地区ウォーキング」等、健康づくり推進員が実施する定期的なウォーキングの支援をはじめ、市民団体やスポーツ団体との「大府シティ健康ウォーキング大会」の共催等、さまざまな主体との連携で多様なアプローチを行っている。
「運動習慣の確立」では、スポーツ推進委員の協力のもと、総合型地域スポーツクラブ「OBUエニスポ」の活用やレクリエーションスポーツの紹介を通して、個々に合った生涯スポーツを推進している。
さらに、ライフステージ別の健康課題に注目し、「運動」の切り口による課題解決も進めている。乳幼児期から学齢期が「健康的な生活習慣の確立」、青年期から壮年期が「生活習慣病対策」、高齢期が「フレイル対策」につながる取組みだ。
乳幼児期から学齢期に向けての取組の一つに「大府市運動遊びプログラム」がある。近年、運動遊びの要素である時間・空間・仲間が成立せず、集団で活発に遊ぶことが難しくなっている。そこで学識経験者や保育士と「大府市運動遊びプログラム」を立案し、保育園の子供たちが楽しみながら自発的に遊べるよう、日々実践している。さらに、同プログラムの知見を活かし、児童センターで未就学児向けの講座を開講するほか、小学校の体育の授業では「走る」「登る」「渡る」「投げる」などの基本動作13領域から成る「はつらつ運動プログラム」を取り入れ、幼少期からの子どもの体力向上の継続につなげている。
青年期から壮年期に向けては、健康経営の一環として多くの市内事業所が参加する「大府市健康プログラム」がある。現役世代が都合のよい時間を使って活動量増加を目指すもので、体組成測定や血圧測定で運動への動機づけを行い、グループ単位でバーチャル上の歩数を競うことで楽しみながら取組める仕組みだ。さらに、継続とヘルスリテラシーの向上のため、ドラッグストアの管理栄養士等の協力を得て、SNSで定期的に食事や筋力トレーニングの情報を提供している。
高齢期のフレイル対策としては、市内の国立長寿医療研究センターと連携し運動と認知トレーニングを組み合わせた「コグニサイズ」を推奨している。市の介護予防教室「健康長寿塾」で実施するほか、多数の市民サークルも自主的に取り入れている。さらに日々の身体活動、知的活動、社会活動を記録する「コグニノート」を配布することで生活の不活発化を防ぎ、フレイルを予防している。
このように運動習慣の有無やライフステージに応じて様々な施策を展開することは、ウイズコロナ社会に適合した取組だと言える。根拠の一つは本市が実施している「週1回以上運動やスポーツに取り組んでいる人の割合」のモニタリングだ。2020年度は、コロナの影響でイベントの中止や体育施設の利用制限等、難しい状況だったにもかかわらずコロナ前の2008年度から0.5ポイントの微減にとどまった。年代別では運動実施率の低かった30~40歳代で実施率が上昇しており、在宅勤務者の増加により、身近な地域でウォーキング等の運動を行った人が増えたことが推察される。
今後も困難な状況下でも持続可能な健康都市の実現を目指して取組んでいく。