行政やボランティア団体、企業、NPOが協働するヘルシーパートナーズのイベントが「防災と健康」をテーマに開催された。講演会やタオル体操、体力測定、フレイルチェックが行われ、満員の会場が笑顔でいっぱいになった。
日時:2018年11月23日(金)/会場:市川市文化会館
主催:市川市健康都市推進員会
共催:認定NPO法人健康都市活動支援機構
参加団体:市川市スポーツ推進委員連絡協議会/MOA食育
ネットワーク千葉ハピネスクラブ/市川災害ボランティア
ネットワーク/かしわフレイル予防サポーター
市川市地域防災課
協賛:山崎製パン株式会社/株式会社はくばく
参加者:約200名
「防災と健康」について考える
主催者挨拶に続き、講演会の講師NPO法人光と風のメンバーが登壇した。2013年、千葉県旭市に設立された団体で、東日本大震災の教訓を後世に語り継ぐため、市の防災資料館や避難タワーの案内、語り部との交流、瓦版の発行等をしている。講演は、小野芳子さんと長男の正和さんの語り部で始まった。避難をしようとした矢先に津波に飲み込まれ、親子共々九死に一生を得た体験談で、「津波を甘く見ないこと、一刻も早く避難すること、そして決して諦めないこと」を訴えた。後半では、理事の平澤つぎこさんが「避難所における体と心の健康」をテーマに報告。平澤さんは当時、赤十字奉仕団としてボランティア活動をしており、不衛生な環境や救援物資の不足、プライバシーの欠如、被災者同士のもめ事等、さまざまな問題に向合ったという。特に配慮したのが、被災者が前向きになるような精神的配慮だ。「殺伐とした避難所に花を一輪飾るだけで癒しになる」と平澤さん。公助が得られない大災害では自助と共助に頼るしかない。そうした事態に備え、「向こう三軒両隣の助け合いを日頃から大事にすることが大切」と強調した。
続いて市川市危機管理室地域防災課の稲垣毅主幹が災害対応を説明。今後30年以内に85%以上の確率で大地震が起きることや、江戸川の堤防が決壊すると50㎝~3m浸水すること等を警告し、洪水ハザードマップを基に浸水被害想定区域や避難所を示した。災害時の備えについては、市川市災害ボランティアネットワークの福田孝至代表が防災グッズとともに心の備えが重要と指摘。災害が起きると心の不安や不満が積もり、トラウマや外傷的ストレス障害を引き起こすためだ。「立ち直るためには現状を悩むのではなく、現状を受け入れ、将来を見ていかに生きるかを考えていただきたい」と訴えた。
最後に「災害時の緊急食料支援」について、山崎製パン株式会社総務本部の伊藤慎一部長が登壇。同社の社会的使命として「日々、お取引先からご注文いただいた品はどんな試練や困難に出会うことがあっても良品廉価・顧客本位の精神でその品を製造し、お取引先を通じてお客様に提供すること」を掲げた。実際に東日本大震災では、飯島延浩社長自らがトラックに乗って現地入りし、陣頭指揮を取ったという。それを可能とするのが、全国のパン工場と物流システムだ。生産工場・事業所は全国30箇所、販売物流拠点は全国40数箇所にも上る。各工場では同じ製品ラインを備えているため、どの地域にも災害の段階に合わせて同じ製品を届けることができる強みもある。製パン業界の国内シェア4割を持つだけに緊急時での信頼は大きく、多くの自治体と災害時応援協定を結んでいる。
健康の維持・増進のために
タオル体操では、同推進員会の近田公子副会長の動きに合わせて参加者全員が肩や腰回り、全身を気持ちよく伸ばした。体力測定のコーナーは市川市スポーツ推進委員連絡協議会との協働で「握力測定」や「上体起こし」、「棒反応」、「長座体前屈」、「ペグ」を実施。参加者が体力や敏捷性を把握する手伝いをした。また、「フレイル予防コーナー」では、柏市から市民で構成する「かしわフレイル予防サポーター」の応援を要請。フレイル簡易チェックを行い、フレイル予防についての知識を広めた。
参加者は、自分の体力を確認し、楽しく頭と体を動かし、満員の会場が笑顔でいっぱいになった。市川市保健部保健医療課の中川瑞枝主幹は「本イベントを通して、他のボランティア団体ともつながりを持ち、共に市民やまち全体の健康づくりを考えることができた」と語る。参加者からは「毎年開催して欲しい」という声も多数聞こえたという。ヘルシーパートナーズ事業を展開する健康都市活動支援機構の千葉光行理事長は「今後も健康フェスタ等で引続き応援したい」とエールを送った。
関係者インタビュー
桒岡 喬さん(市川市健康都市推進員会会長)
地域住民の健康のために、私たち推進員は日々健康都市活動に取組んでいます。健康は個人だけの責任ではなく、まちや社会環境の健康が大きく影響します。そのために行政やNPOと連携しており、健康フェスタはその一環です。課題はいかに活動をPRするかです。市の広報とともに人間関係を広め、口コミ効果も発揮したいと思います。高齢者には家に閉じこもることなく、どんどん社会参加していただきたい。私自身、今もスポーツクラブに毎日通い健康そのものです。社外役員と故郷である広島県安芸高田市のふるさと応援の会の理事を務めており、忙しい日々を送っています。
中川 瑞枝さん(市川市保健部保健医療課主幹)
当市は、すべての人が健やかで心豊かに生活できる「誰もが健康なまち」づくりをめざして、様々な健康増進活動を行っています。急速に進む高齢社会において健康寿命の延伸を図るためには、市民一人ひとりが健康づくりに関心を持ち実践することが必要です。そのためには、人々が繋がり支え合うまちづくりも大切です。これらを担うのが健康都市推進員による活動です。健康づくりのリーダーとして、心や体の健康、安心・安全なまちづくりに関する情報を身近な地域の人々に伝えるともに、健康に関するイベントを開催しています。今後もヘルシーパートナーズ事業を通して市民の声や要望を汲み取り、役立つ情報を発信し、他団体とパートナーシップを組んで「誰もが健康なまちいちかわ」を目指していきたいと思います。