2016年8月29日~9月1日に韓国原州(ウォンジュ)市にて、第7回健康都市連合国際大会が「私たちの都市、私たちの健康、私たちの未来」をテーマに、14か国2地域からおよそ700名が参加して開催されました。
会期:2016年8月29日(月)~9月1日(木)
開催市:韓国原州(ウォンジュ) 市
会場:ハンソルオークバレーリゾート、医療機器総合支援センター(MCC)
主催:ウォンジュ市、健康都市連合(AFHC)
後援:WHO西太平洋地域事務所、韓国保健福祉省、韓国江原道、韓国旅行協会、健康都市連合韓国支部、江原道観光財団、健康都市研究センター、延世大学
メインテーマ:「私たちの都市、私たちの健康、私たちの未来」
サブテーマ:「ヘルシー・セッティング(場)」、「すべての政策で健康を」、「高齢者に優しい都市」、「心の健康と自殺防止」、「生活習慣病予防」、「運動による健康増進」、「健康の社会的要因」、「禁煙都市」、「セラピーによる癒し」
開催地の原州(ウォンジュ市)はソウル首都圏に隣接する江原道南部に位置し、人口約35万人を擁します。市のスローガンは「Healthy Wonju」。かつては江原道の中心地で、古来から韓紙の本場として栄えました。現在は東西南北をつなぐ高速道路が交差する交通の要所で、観光や物流をはじめさまざまな産業が発達しています。特に先端医療機器産業が盛んです。中心となるのが財団法人原州医療機器テクノバレーで、延世大学等による産学官連携体制により、医療機器メーカーに製品開発をワンストップで支援するサービスを提供しています。大会は市街地から北に30kmほどの丘陵地にあるハンソルオークバレーリゾートと産業集積地のシンボルである医療機器総合支援センター(MCC)で開催されました。
持続可能な開発目標と健康的で回復力のある都市
大会には14か国2地域からおよそ700名が参加しました」。開会式では最初にWeon Chang-mugウォンジュ市長が登壇。大会テーマのもと、参加者間で生活環境からライフスタイル、活動といったさまざまな領域での健康都市の政策や事例について情報共有を促すとともに、WHOが新たに掲げたレジリエント都市や国連が提唱する持続可能な開発目標の探求についても提案しました。続いて健康都市連合韓国支部長でソウル特別市江東区のLee Hae-sik区長が挨拶。健康都市連合韓国支部設立10周年の節目で本大会を迎えることは大変意義深いとし、健康都市プロジェクトを通じて各都市が連携し健康的なライフスタイルと持続可能な開発を実現したいと抱負を述べました。
本会議では、WHO西太平洋地域事務局のShin Young Soo局長が「私たちの都市、私たちの健康、私たちの未来のための持続可能な開発目標」と題する基調講演を行いました。Shin局長はまず、2015年に期限を迎えたWHOのミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)を継承・発展させるアジェンダとして、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を紹介。MDGsが国連主導型で発展途上国を対象としたのに対して、SDGsは政府主導型ですべての国々が対象であることを説明しました。また、SDGsでは新たな思考が求められるとして、政府と健康に関与する公民のあらゆる機関が連携すべきと指摘。アジェンダに基づくWHO西太平洋地域の新たな行動計画として、「Healthy and Resilient Cities(2016~2020)(健康的で回復力のある都市)」を発表しました。「世界の発展の傍ら、無秩序で急激な都市化が進んでいる」とShin局長は警告し、データで未来を予測し都市を計画することで、環境や衛生、食の安全、不平等の解消、災害の予知と迅速な復旧を実現すべきと訴えました。
続く全体セッションでは、WHO西太平洋地域事務局非感染症性疾患・生涯健康部のスーザン・メルカド局長らが登壇。健康的で回復力のある都市の構築に向け、フォーサイト手法を紹介しました。この予測手法は社会的行為がもたらす予期しない、意図しない、認識されていない影響の発見と、新たな機会や脅威、課題の特定を支援するための一連のツールで構成されます。国と地方の団体、政府・非政府機関、学術機関、営利目的の民間団体などによって活用されており、傾向分析、予測能力、対応力の強化に有効なツールとなっています。都市の健康増進のための総合的な取り組みは、事後対応から事前予防へと重心を移しつつあることから、フォーサイト手法は健康都市の回復力を高める上で大きな可能性を有するとされています。セッションでは、フォーサイト手法の成り立ちや原理のほか、政府・非政府機関、民間部門におけるフォーサイト手法の活用経験等が発表されました。
市長フォーラム
大会は各都市の成功事例について学ぶ場でもあります。市長フォーラムでは、ウォンジュ市やオーストラリア・ニューサウスウェールズ州のイラワラ、マレーシアのクチン市、愛知県尾張旭市等の市長たちが健康都市の取り組みを発表しました。その中で尾張旭市の水野市長は生活習慣病を予防する取り組みを紹介。丘陵地のウォーキングコースをはじめとする環境整備や筋力トレーニング教室等による成果を発表しました。また、名古屋産業大学や名古屋経営短期大学、美津濃株式会社との共同事業も紹介し、産官学による健康都市の取り組み事例も示しました。
NGO健康都市活動支援機構のセッション
分科会では、サブテーマに沿って「ヘルシー・セッティング(場)」をはじめとするさまざまなセッションが開かれました。当機構は健康都市連合の理事として国際交流・支援事業を担当しています。今年2月に「食生活と栄養改善」をテーマとする交流事業を日本で行った際、特に注目を集めたのが、食生活改善推進員をはじめとする健康ボランティア団体や学校給食等を中心とする地域ぐるみでの食育への取組みでした。そこで分科会では、「子どもを中心とする食育の現状と課題」について、尾張旭市、フィリピンのタガイタイ市、シンガポールの代表者から各加都市の施策や活動事例を発表いただき、今後の国際協力についても展望しました。
アワードの授与
本大会では、優れた健康都市活動に対してWHO西太平洋地域事務局および健康都市連合からアワードが授与されます。本年度、日本の都市としては、尾張旭市が非感染症予防の取り組みでWHO西太平洋地域最優秀賞を受賞しました。健康都市連合の主なアワードでは、クリエイティブな進展部門で尾張旭市の「定期評価に基づく健康都市施策の効果的推進」並びに神奈川県大和市の「保健師・管理栄養士による地域訪問活動による非感染症予防」が、健康都市推進部門で愛知県大府市の健康基盤整備がそれぞれ受賞しました。さらに、当機構の千葉光行理事長が健康都市パイオニア賞を受賞しました。