7月26日(火)の総会後、同日午後~27日(水)の両日、第12回健康都市連合日本支部大会が同じく千葉県流山市のキッコーマンアリーナで全国1,200名の参加者のもと開催されました。
講演やパネルディスカッションをはじめ、事例発表やアトラクション、落語まで、充実したプログラムが展開されました。
大会
大会はメインアリーナで開催されました。
エントランスでは千葉県のマスコットキャラクター、チーバくんがお出迎え。
大会に先立ち、歓迎アトラクションとして、地元DANCE☆BOXが幼稚園児から高校生までの華やかなダンスを披露しました。
大会では、最初に新支部長の秋山柏市長が登壇。「北は帯広市や網走市、南は南さつま市まで、まちの健康づくりの真ん中で奮闘する皆さんに集まっていただいた。情報を共有し懇親を深めてもらい、各地の健康づくりやまちづくりの施策が益々発展することを祈念する」と挨拶しました。
開催都市の挨拶では、井崎流山市長が「市制50周年を迎えるとともに健康都市宣言をしてから10年という記念すべき年に日本支部大会を開催できることは光栄」と謝意を示し、「優れた講演や事例報告が用意されており、健康都市の推進に有意義な大会になることを望む」と述べました。
来賓挨拶では、まず千葉県の諸橋副知事が登壇。「高齢化による介護保険対策等の課題が山積しており、行政としては国民に健康に過ごしてもらうのが一番」とした上で「こうした社会情勢の中、全国からの参加者が経験や知恵を出し合う本大会は大変意義深い」と期待を寄せました。
最後にNGO健康都市活動支援機構の千葉理事長(健康都市連合日本支部顧問)が壇上に上がり、「NGO健康都市活動支援機構は連合との両輪として活動している」と役割を位置づけた上で、連合の国際支援事業の一環である国際交流事業の報告や、日本支部加盟自治体や地域の健康ボランティア団体の支援を目的とするヘルシーパートナーズ事業を報告し、参加協力を呼びかけました。
基調講演
最初に、健康都市連合中村事務局長(東京医科歯科大学大学院教授)が「健康を支える都市づくり」のテーマで基調講演を行いました。「健康に影響を与える生活環境や諸条件は人口動態、居住条件、所得、教育、栄養、労働、生活習慣、保健・医療・福祉、都市基盤等の多岐にわたる」ため、「そうした要因にもっと注目すべき」と指摘した上で、健康的な都市環境計画、高齢者にやさしい街づくり、健康危機に備えるまちづくり、環境的に持続可能なまちづくりを例に挙げながら、健康を支える都市づくりの展開と市民の役割について紹介しました。
次に東京大学国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構の武内教授が登壇。「自然と共生する持続可能なまちづくり」のテーマで基調講演を行いました。武内教授は「自然は恵みをもたらすとともに、災害を引き起こす脅威ともなる。自然災害をしなやかに受け止めるレジリエントな自然共生社会が求められている」と述べ、水と緑のネットワーク化や里山の保全、生態系を活用した防災のあり方などについて、事例を交えて論じました。
事例報告
初日の事例報告では、流山市子ども家庭部保育課と環境部環境政策・放射能対策課の職員がそれぞれ「送迎保育ステーション」と「まちなか森プロジェクト」のテーマで発表しました。
当市では、流山おおたかの森駅と南流山駅に「送迎保育ステーション」を設置し社会福祉法人に運営を委託しています。目的は、待機児童の解消や送迎にかかる保護者の負担軽減です。朝と夕方に「送迎保育ステーション」と市内指定認可保育所(34園)の間で児童を送迎しています。
一方の「まちなか森プロジェクト」は公園の一部や公共施設をはじめ用水跡地や道路用地などの隙間空間を植栽し、街中の緑を増やす取り組みです。生活環境のうるおいのほか、防災対策や温暖化防止の役割も果たしています。報告では、平成22年~25年度の「宮脇方式による植樹」(14,000本)と平成26年~28年度の「千葉県トラック協会との協同による植樹」(500本)を発表しました。
パネルディスカッション
続くパネルディスカッションでは、「健康を育てるまちづくり」をテーマに、神奈川県大和市の大木市長、愛知県尾張旭市の水野市長、愛知県大府市の岡村市長、流山市の井崎市長が登壇しました。コーディネーターは東京医科歯科大学の小川客員教授が務め、コメンテーターに中村事務局長と武内教授を迎えました。
大木市長は「健康都市やまと」のまちづくりとして、すべての政策で「人の健康」「まちの健康」「社会の健康」を位置付けているとし、主な事業成果として待機児童ゼロの達成、市の財政の健全化、出生率の増加、医療施設の黒字化と医師の確保について発表しました。また、高齢者の介護予防を目的とする公園での健康遊具の設置や生活習慣病を目的とする保健師の訪問活動、乳がんの検診、AEDの設置、コミュニティバスの充足、自転車レーンの増設による事故の減少等についても紹介しました。
水野市長は健康都市尾張旭の象徴としての「あさひ健康フェスタ」について報告しました。本年度は来場者数2,412名、参加団体数41の一大イベントに成長したとのこと。スポーツ推進員の協力で市内会場を巡るウォーキングコースを設定し、さまざまなイベントを楽しめる工夫をしている様子や、健康チェックや講演会をはじめ、健康づくり推進員や食生活改善推進員のブース、まちの健康ブースや防犯・防災のブース、農協のマーケット、企業(大塚製薬、ミズノ)ブースが出展状況を紹介しました。意識の高まりや健康づくりの実践において役立つイベントとなっていることに触れ、市民の健康のために市民団体や企業、行政がそれぞれの立場で参加している様子を紹介。健康都市の推進には、ありとあらゆる団体、人々の全員参加が不可欠と締めくくりました。
また、岡村市長は「誰もがウォーキングを楽しめる環境計画」と「子どもから高齢者までが参加する『健康づくりチャレンジ』での意識醸成」について報告しました。ウォーキングではハード面で、地形を利用した18のウォーキングコース、マップの制作、沿道の植栽、休憩場所やコースの案内看板の設置を紹介ました。楽しむためのソフトやそれらを支える担い手の体制では、スマートフォンアプリのウォークナビの開発(距離や歩数のデータ化や拠点情報を提供)、ウォーキング大会の開催、健康マイレージ事業の導入について報告し、それらを支える健康づくり推進員や観光ボランティアの役割も紹介しました。一方の「健康づくりチャレンジ」では、食や心の健康のテーマで1か月間の目標を定めて取り組む「チャレンジカレンダー」について、中学生、保育園年長児、企業を対象に発表しました。
最後に井崎市長がすべての政策で健康に取り組む状況を説明しました。当市の人口が10年間で18%増加した中で、子育て世代が3割、その子どもたちと65歳以上の高齢者が4割増えていると指摘。これらの世代をメインターゲットする健康都市プログラムの推進について、「心と体を健やかに育むまちづくり」「緑の回復・保全と安心・安全のまちづくり 」「子育て環境の充実・長寿社会対応のまちづくり」「地域の豊かな文化とスポーツを楽しめるまちづくり」「安全で健やかな食生活を楽しめるまちづくり」の5本の柱のもと、リーディング事業について報告しました。具体的には、地産地消による給食での流山産食材の使用や、土地の確保が困難なため市街化調整区域で民間用地を3か所借用してスポーツ施設を整備する例等が報告されました。
以上の報告に対して、武内教授は行政の目指す方向が変化してきたと指摘。人的資本の中で、健康や教育を重視する視点をそれぞれの市長が持っていることと、健康の概念を広く捉えていること、さらに都市や社会自体の健康を捉える「エコエルス」の視点で少ない財源ながらインフラをどう工面するのかという方向に向かっていることに感銘を受けたと感想を述べました。また、今回のテーマは参加自治体だけでなく広く日本にかかわる問題と指摘し、消滅自治体が懸念される中で、日本全体として持続可能になるように、健康都市連合の取り組みが一つの方向に向かうことを望むと結びました。
最後に中村事務局長が健康を育てるまちづくりには「安全に動くことができるまちづくり」「健康によい食生活」「自然との共生」「人材育成」4つの切り口があると指摘。今回発表があったウォーキングルートやコミュニティバスの整備、地産地消による安心・安全の確保、都市化に伴う自然破壊を緑の整備で回復する試み、地域の健康リーダーや市役所の職員の育成等、どれをとっても長期の積み重ねが大事であることと、そうしたまちづくりをすべての市民、行政、専門家が地域で取り組むのははもちろん、健康ネットワークを全国大会や国際大会を通じて築くことを提案して締めくくりました。
二日目事例報告
大会二日目の事例報告は、岐阜県多治見市の健康づくり推進員と網走市食生活改善協議会が行いました。 多治見市の健康づくり推進員は平成28年度の事業として、23回のウォーキング大会、市内16会場での「らくらく筋力アップ体操」、児童館や児童センターと協働した「親子さんぽ」、街頭での禁煙啓発活動等を紹介しました。 続いて網走市食生活改善協議会が地域と協働した男性料理教室や「生涯骨太クッキング及びシニアクッキング」を説明し、若い世代の参加への取り組みについて報告しました。
次期開催地
次期第13回日本支部大会の開催が、北海道網走市にて平成29年7月4日~5日に決定。水谷網走市長が大勢の参加に向け、スポーツによる健康都市の取り組みや蟹に代表される「おいしいまち網走」をアピールしました。
健康落語
大会のフィナーレを飾る健康落語では、「一笑一若・一怒一老」(いっしょういちじゃく・いちどいちろう:人間、一つ笑う毎にひとつ若返り、一つ怒るごとに一つ老けるの意味。)のタイトルで山遊亭金太郎師匠が高座に上がりました。師匠は平成3年真打に昇進し、落語芸術協会監事や千葉県生涯大学講師も務めています。観客をネタにして笑いをとるかと思えば古典落語の名演技をじっくり聞かせ、最後に百面相を披露したりと健康的な笑いで広い会場を沸かせました。
ランチ交流会
終了後には、健康ボランティア団体同士による昼食会が、流山市健康づくり推進協議会の主催で開催されました。各自がさまざまな団体との交流を促すよう、色分けされたテーブル毎にランダムに着座。8人程のグループ毎に親睦を深め、情報交換を行いました。
パネルコーナーと展示ブース
会場には行政のパネルコーナーや団体・企業の展示ブースが設けられ、連日大勢の人々で賑わいました。