歩行の質を強化する「パワー歩行」で進め! 介護予防

歩数や歩いた距離だけにこだわるのではなく、「歩行の質」を向上させることが健康寿命を伸ばす決め手——花王株式会社が研究・開発した独自の歩行支援プログラムに、東京・足立区がいち早く注目。平成26年度、約半年にわたって介護予防プログラム「歩行年齢若返り講習会」を提供しました。

健康都市活動支援機構レポート No.01

区民の“介護予防に対する意識の高さ”を感じた

 

このプログラムは、健康寿命を伸ばす研究で知られる大渕修一先生(東京都健康長寿医療センター研究所・研究副部長)を講師に迎え、「歩行年齢若返り講習会」と題して、2014年5月のセミナーからおよそ半年の期間をかけて行われました。対象は、足立区にお住まいの65歳以上の高齢者。参加したのは約120名にのぼり、区民のこのプログラムに対する期待の高さが伺えました。


パワー歩行を提唱する大渕先生
パワー歩行を提唱する大渕先生

意識を変え、歩き方を変えて、筋力を変えていく

 

要介護認定を受けずに元気に生きる「健康寿命」を長くしたい。そのためには要介護の原因になりやすい関節疾患、骨折転倒、認知症等を防がねばなりません。そうした加齢による機能低下に効果を発揮するのが“歩く”こと。しかし、ただ歩くのではなく、筋肉を強くする歩き方を実践することが大切です。このような「パワー歩行」は、筋肉に刺激を与え、ふくらはぎを太くし、足腰も強くします。また血流が良くなって、脳も活性化されます。「たくさん歩くことも大切ですが、「パワー歩行」のポイントは、スピードを意識してテキパキ歩くこと。適度な負荷が筋肉を強くするんですよ」と話す大渕先生のわかりやすい解説から、このプログラムはスタートしました。

5月のセミナーに続いて6月に行われた歩行の質の測定会では、シート式圧力センサーやビデオなどを使って、一人ひとりの歩行をチェック。花王が開発したソフトウエアにより自分では気付きにくい歩き方のクセや、足裏への体重のかかり方が、データと映像で確認でき、歩行の問題点が明らかになります。自分の歩き方や歩行年齢を目の当たりにして、参加者の歩行改善への関心はますます高まりました。

その後の約3ヶ月間は「パワー歩行」の実施期間です。貸与された特別な歩行計を常にベルトに装着して歩きました。これには花王が開発したアルゴリズムが組み込まれており、歩行生活年齢を評価するためのデータを収集します。後日伺った話では、参加者はみな自分の歩行生活年齢を若返らそうと、意欲的に歩いたといいます。その頑張りは10月の第2回測定会で、明らかな改善としてデータ上に現れました。わずか数ヶ月の「パワー歩行」で、理想の歩き方に近づくことがわかったのです。

参加者の多くから「効果を実感できた!」と喜びの声

 

そして12月には最終回の結果報告会が行われ、これまで同様、100名を超える参加者で区役所の庁舎ホールは埋まりました。集約された最終データ(男女平均)からわかったのは、このプログラムが歩行改善をもたらし、それが「体と頭」に刺激を与え、好結果をもたらすこと(図A 、B参照)。大渕先生のまとめのお話後に行われたグループワークでも、「姿勢に気をつけて踵から地面に着くように歩く」、「エレベーターより階段を使うようになった」、「外出が増えた」などの意識の高まりだけでなく、「77歳なのに歩行年齢が44歳になった」、「血圧が平常値に下がってきた」、「ふくらはぎの筋肉が太くなった」など、改善を裏づける発言が次々に出されました。

意識を変え、歩き方を変えて、筋力を変えていく

 

要介護認定を受けずに元気に生きる「健康寿命」を長くしたい。そのためには要介護の原因になりやすい関節疾患、骨折転倒、認知症等を防がねばなりません。そうした加齢による機能低下に効果を発揮するのが“歩く”こと。しかし、ただ歩くのではなく、筋肉を強くする歩き方を実践することが大切です。このような「パワー歩行」は、筋肉に刺激を与え、ふくらはぎを太くし、足腰も強くします。また血流が良くなって、脳も活性化されます。「たくさん歩くことも大切ですが、「パワー歩行」のポイントは、スピードを意識してテキパキ歩くこと。適度な負荷が筋肉を強くするんですよ」と話す大渕先生のわかりやすい解説から、このプログラムはスタートしました。

継続は“筋”力なり。歩く意欲をキープするための工夫とは?

 

こうした成果を生み出すには、参加者の意欲の継続が欠かせません。このプログラムで見逃せないポイントのひとつが、モチベーションづくりの工夫です。参加者は歩行計のデータから一人ひとりの歩行成果レポートを出力してもらうために、毎月必ず区役所の高齢サービス課の窓口を訪ねます。そのとき区のスタッフと会い声をかけられるのが、参加者の励みになり、継続意欲が高まったのです。

フェイス・ツー・フェイスの接触で、区民と職員の距離が縮まります。また、窓口に置かれた「各種パンフレット」などを持ち帰り、「従来とは見違えるほどパンフレットが早くなくなるようになりました」とスタッフの方が驚くほどでした。参加者とのふれあいで行政が発信したい情報が高齢者にしっかり確実に伝わるのも、大きな収穫です。参加者のアンケートからは、「区の情報をよく知ることができるようになった」という声が聞かれ、それを裏づけています。

区役所の窓口で歩行成果レポートを受け取る。スタッフの励ましが参加者の歩く意欲を高めた。
区役所の窓口で歩行成果レポートを受け取る。スタッフの励ましが参加者の歩く意欲を高めた。
 歩行成果レポートは、目標の達成度が一目でわかる。
歩行成果レポートは、目標の達成度が一目でわかる。

民間企業の発想を行政に活かすスタイルが増えそう

 

参加した区民たちは、介護予防へ大きな一歩を踏み出しました。しかし、この「パワー歩行」をもっと広く根付かせていくには課題もあります。区福祉部の山杉正治高齢サービス課長は「今回のプログラムに参加した方はとても意識が高まりました。ぜひ今後とも継続したい」と成果を強調したあと、「動機付けは行政がさせていただきますが、これを区民の皆さんの日常生活につなげる仕組みにしていくには、さらにひと工夫必要かと思います」と、今後の課題を見据えていました。一方の花王 ㈱のヒューマンヘルスケア事業ユニット 根橋勉マネージャーはこう語ります、「区担当様のご尽力により離脱者が非常に少なく毎回100名を超える参加者があり、「歩行の質」についての理解が深まると同時に、歩行力の向上も見られました。何より参加者の方々の笑顔を拝見して、改めてこのプログラムを提供して良かったと感じています。今後も行政の皆さまに利用していただいて、介護予防のまち(健康都市)づくりに貢献したいと考えています」。官と民が手を携える健康増進策の、これからの広がりを予感させる介護予防事業でした。

詳しくは、花王株式会社 フード&ビバレッジ事業グループ測定会担当 TEL.03-3660-7266

(受付時間 9:00~17:00〈土曜・日曜・祝日除く〉)



公式サイト


事業サイト


健康都市連合



ヘルシーパートナーズ協賛企業