「筋肉枯れ」を防いで「延ばせ! 健康寿命」

長寿世界一を誇るわが国にとって、大きな課題は「健康寿命の延伸」です。それを脅かし、要介護や寝たきり状態を招く原因として近年よく取り上げられるのが、ロコモティブシンドロームとサルコペニアです。加齢から起こるこれらの症状を予防する栄養補給の研究を続け、シニアのアクティブライフを応援する味の素㈱の、社会的に意義深い取組と成果を紹介します。

「不健康な期間」の短縮こそ至上命題!

 

 今年5月に発表されたWHO(世界保健機関)の2015年版「世界保健統計」によれば、日本人の平均寿命は84歳(2013年時点での男女合計)で、前年に引き続き加盟国中の首位となりました。

 ただ、大きな問題があります。介護を受けたり寝たきりにならずに日常生活を過ごせる期間を示す「健康寿命」は、平均寿命より男性が9年、女性は12年も短いのです。平均寿命から健康寿命を差し引いたこの「不健康な期間」(不健康寿命)は、医療・介護費の負担増にも直結します。国民の負担を軽減し、シニアが元気で健やかに毎日を暮らせるよう支援する施策が強く求められるところです。

 こうしたことから、厚生労働省「健康日本21(第二次)」では基本方針のはじめに、「(1) 健康寿命の延伸、(2) 健康の(都道府県間)格差の縮小」という二つの課題が掲げられています。「社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上」によって健康寿命の延伸(不健康寿命の短縮)を図ることは、健康都市、各自治体にとって至上命題となっています。

健康寿命の延伸を脅かすロコモとサルコペニアとは?

 

 介護を受けたり、寝たきり状態になるリスクを高める大きな要因のひとつが、ロコモ(ロコモティブシンドローム=運動器症候群)です。加齢に伴い、筋肉、骨、関節などに支障をきたし、運動器の障害が引き起こされ、「立つ」、「歩く」といった日常生活が困難になり、悪化すると要介護や寝たきり状態になることをいいます。

 

20代と80代でほぼ同じBMIの女性の大腿筋肉の断面図を比較。20代に比べて80代の筋肉が萎縮し筋肉量が減少していることがわかります。

 

 とくに注意したいのが、筋肉の衰えです。加齢とともに筋肉をつくる力が弱まり、筋肉量が減少します。骨を支える大切な役割を担う筋肉の量が減ると、腰やひざの痛み、背中の歪みなどを引き起こします。このように、老化に伴い筋肉の量が減り、筋力や歩行速度が低下した状態を、サルコペニアと呼びます。

 

 ロコモもサルコペニアも、高齢者なら誰でも起こりうるもので、予防対策が最近とくに重視されるようになってきました。

 筋力が低下すると、疲れやすくなり、歩行速度が遅くなったり、転びやすくなります。骨折やケガをしてベッドでの生活が長くなれば、筋力はますます低下します。生活機能の低下が運動不足を招き、さらに筋肉量が減ってしまいます。こうした負のスパイラルがいわゆる「筋肉枯れ」を加速させます。

 「筋肉枯れ」は気付かないうちに徐々に進行します。そして、ロコモやサルコペニアの原因ともなり、更なる健康リスク(転倒、骨折、糖尿病、メタボなど)を生む恐れがあります。

「筋肉枯れ」の予防と対策

 

 では、シニアに怖いロコモやサルコペニアは予防できるのでしょうか。

 加齢に伴う疾患の基礎研究と予防・治療の開発を進める国立長寿医療研究センター研究所の所長として活躍されてきた鈴木隆雄先生(現:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター理事長(総長)特任補佐)は「予防は可能です」と答え、2点を挙げています。ひとつは適度な運動です。もうひとつは栄養補給をしっかり行うこと。「筋肉の再生には環境条件を整えることが大事です。筋力を構成するタンパク質をつくるのに欠かせないアミノ酸や、タンパク質、ビタミン類をしっかりと摂取して、これらが体内に十分にあれば、筋肉は維持・改善できます」(鈴木先生)。

 ただし、このタンパク質摂取にあたっては、高齢者には特有の課題がある、と鈴木先生は次のように指摘します。「人間は、加齢とともに筋タンパク質をつくりだす力が弱くなるので、筋量が減ってしまいます。ですから、シニアの皆さんは“意識的に”タンパク質を摂ることが重要です。とくに、人の体内ではつくれない必須アミノ酸をまんべんなく摂るために、植物性・動物性のどちらのタンパク質もバランスよく摂ることがとても大切になります」。

 厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2015年版)』には、タンパク質の摂取推奨量が記載されており、この数値をみると、男性60.0g・女性50.0gと全年代同じ推奨量になっています。ただし、高齢者は体内でのタンパク質合成力が弱くなります。さらに食も細くなって食事量も減るため、より多くのタンパク質を“意識的に”摂取することが望ましいといえます。

「健康寿命の延伸」に貢献する味の素㈱の研究と成果

 

 筋肉の衰えを予防する栄養補給のポイントとして近年明らかになってきたのが、必須アミノ酸の一種であるロイシンの役割です。このロイシン摂取の重要性を突きとめたのが、アミノ酸研究のパイオニア、味の素㈱です。

 「アミノ酸技術で人類に貢献する」ことを掲げる同社は、その研究知見を、食品から医療にいたるまで幅広い分野で活かしてきました。そのひとつが、アミノ酸研究の知見を、健康寿命の延伸に役立てたいという最先端の研究です。米国テキサス大学と共同で推進したアミノ酸の効果を確認する実践的な研究を通じて、高齢者の筋タンパク質合成促進、そしてサルコペニア対策には必須アミノ酸が重要であり、なかでもロイシンを高配合した必須アミノ酸が有用であることが明らかにされました。

 この研究をベースに開発されたのが「Amino L40」です。これは、筋タンパク質合成に最適な必須アミノ酸バランスを実現した、ロイシン高配合の必須アミノ酸混合物です。この「Amino L40」摂取と運動の組合せで、筋量と筋力をアップさせることが明らかになっており、その有用性はすでに国内外の学会で高く評価されています。厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2015年版)』にも、その記述が見えます。同書によれば、「最近、日本人を対象とした、ロイシン高配合(40%)のサプリメントとレジスタンス運動を組み合わせた介入試験の結果が報告され」、「サルコペニアが顕在化している75 歳以上の155 人の高齢女性を対象」とした 研究で、「ロイシン高配合アミノ酸サプリメント」が高齢者のサルコペニア対策として有用と紹介されています。

 

都区内在住の75歳以上の女性155人の高齢女性を対象として、3ヵ月間研究を行った結果、「『Amino L40』摂取と運動」で筋量、筋力が増大し歩行速度が有意に改善することがわかりました。

 下のグラフの通り、(1)「Amino L40」摂取と運動、(2)運動のみ、(3)「 Amino L40」摂取のみ (4)とくに対処なし、の4 群で3ヵ月間行った結果、(1)の「Amino L40」摂取と運動によって高齢女性の筋量、筋力がアップすることがわかりました。

内臓脂肪と体重(BMI)の分布 ~男性~

 

 「健康寿命の延伸」へ貢献するこうした研究成果をもとに、味の素㈱では2012年、新しいプロジェクトを起ちあげました。「アクティブシニアプロジェクト」です。「質の良い食と栄養」によって健康寿命延伸に貢献し、シニアのQOL(Quality of Life、生活の質)の向上に寄与することをコンセプトにしています。以降同社では、ロコモ、サルコペニア予防に向けて、タンパク質、アミノ酸の健康価値についての普及・啓蒙の社会活動を広く各地で展開しています。

内臓脂肪と体重(BMI)の分布 ~男性~

 

 「健康寿命の延伸」へ貢献するこうした研究成果をもとに、味の素㈱では2012年、新しいプロジェクトを起ちあげました。「アクティブシニアプロジェクト」です。「質の良い食と栄養」によって健康寿命延伸に貢献し、シニアのQOL(Quality of Life、生活の質)の向上に寄与することをコンセプトにしています。以降同社では、ロコモ、サルコペニア予防に向けて、タンパク質、アミノ酸の健康価値についての普及・啓蒙の社会活動を広く各地で展開しています。

 「健康日本21(第二次)」では重要事項として、「国、地方公共団体等は、……、優れた取組を行う企業等を評価し、積極的に広報を行うなど、健康づくりのための社会環境の整備に取り組む企業等が増加するような動機付けを与えることが必要である」とし、そうした企業・諸団体との「連携」の必要性を謳っています。



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